血液内科
血液は、大きく分けて赤血球系、白血球系、血小板系から成り立ちます。それぞれの成分のバランスが崩れると色々な症状が出現します。例えば赤血球が不足すると貧血が、白血球が不足すると免疫低下が、血小板が低下すると出血傾向が出現します。逆に各成分が異常に増加する場合もあります。これらは自覚症状が出ないことがあり、症状が出た時点で重大な疾患を合併していることがありますので定期的な検査が必要になります。以下に疾患を紹介します。
1.貧血性疾患
#鉄欠乏性貧血:赤血球をつくるのに必要な鉄が不足するために起こる貧血です。鉄は食餌から摂取しますので食生活に原因のある場合、癌などの消耗性疾患のよる鉄の吸収不足などがあります。また、慢性の出血から鉄が失われて出現するものもあります。
#溶血性貧血:自己免疫疾患で、自分の血液に抗体がつくことで赤血球が破壊される疾患です。
#大球性貧血(ビタミンB12欠乏性、葉酸欠乏性貧血)
何らかの原因でビタミンB12や葉酸が欠乏して起こる赤血球が大きくなるタイプの貧血です。
#骨髄異形成症候群(MDS) による貧血。
赤血球、白血球、血小板の元は骨髄でつくられていますが、そのつくりかたのバランスが悪かったり、不良品をつくっているために、不良品は破壊され、残った正常血球が少なくなることから貧血をきたします。この疾患は白血球、血小板の数や質にも影響を及ぼし、輸血依存になったり、白血病になったりする恐れのある重大な疾患です。
2.白血球異常をもたらす疾患
# 急性白血病(骨髄性、リンパ性)
生命に関わる重大な疾患です。貧血症状、出血症状、免疫力低下による感染症症状などで気づかれることが多いです。早急に骨髄穿刺検査等の精密検査を行い診断を確定して治療をする必要があります。
# 慢性白血病 (骨髄性、リンパ性)
比較的ゆっくり経過するもので、血球増多に伴う動機・息切れ、脾腫症状などで見つかることが多いです。以前は不治の病でしたが、現在は内服薬で病勢をコントロールできることが多くなりました。
# 骨髄異形成症候群
高齢者に多くみられる疾患です。赤血球の項目で登場した疾患ですが、骨髄での血球形成異常に伴う疾患ですので、白血球系の異常も多くなります。白血球数は多くなる場合、少なくなる場合があります。また、白血病細胞である骨髄芽球の増加を伴うばあいがあり、白血病に移行することもあります。
慢性に経過して、輸血が必要になることもありますが、治療としてはアザシチジン(商品名ビダーザ)投与によって改善することもあります。
3.血小板異常をもたらす疾患
#特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
血小板に自己抗体が付着することで血小板が主に脾臓で破壊、結果として血小板低下から出血傾向をきたす疾患です。東京都の難病指定疾患ですが、稀少疾患ではなく高齢者に比較的多く見られます。ピロリ菌の除菌を行ったり、ステロイド治療を行うことで病状は改善します。
#血小板増加症
通常血小板数は13万〜35万/×104/μLですが、これが45万以上になった場合を言います。本態性血小板血症、骨髄増殖性疾患、骨髄異形成症候群に伴うもの、家族性血小板増多症等によるものがあります。それぞれに応じて治療法が異なりますので診断を確定することが大事です。
5.血液腫瘍:代表的な疾患である、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫に関して簡単にご紹介致します。
#白血病:⽩⾎病は主に急性⾻髄性⽩⾎病 、慢性⾻髄性⽩⾎病、 急性リンパ性⽩⾎病 、慢性リンパ 性⽩⾎病に⼤別されます。いずれも⾻髄で⾎液細胞の異常増殖がおこることで発症する疾患です。各分類によって治療法が大きく異なりますので、採⾎、⾻髄検査、遺伝⼦検査等によって診断が確定後に治療が行われます。
#悪性リンパ腫:リンパ腺の悪性腫瘍です。ホジキン型、非ホジキン型に別れますが、日本人は90%が非ホジキン型です。多くはリンパ腺の腫れで気づかれますが、腹腔内リンパ節、縦隔リンパ節、胃内部のリンパ節の腫脹で見つかることもあり、画像診断が重要になります。いずれも生検して組織診が行われることで診断が確定します。治療は、全身化学療法、放射線療法を組み合わせて行います。治療期間は長くなることが多いのですが、治療によって長期の寛解が期待できます。
#多発性骨髄腫:骨髄形質細胞の腫瘍化が原因の疾患です。慢性に経過することが多いのですが、腎障害、骨破壊、血液粘度亢進等の合併症によって生命予後が悪化しますので早期発見、治療の介入が必要になります。