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認知症について

認知症とは

一旦正常に発達した知的機能が持続的に低下し、複数の認知障害があるために社会生活に支障をきたすようになった状態と定義されます。即ち、知的機能が低下しても日常生活が維持されて、ご本人、ご家族が困ったことがなければ認知症とは言えません。

しかし認知症になると、記憶障害、見当識障害(時間場所の感覚がわからなくなる)等が出てきて何らかの障害がでてきます。一方で、区別すべき病態として、意識障害やせん妄、加齢による認知機能の低下、うつ状態によるいわゆる“仮性認知症”、老人性妄想障害、精神遅滞などがあります。また、治療可能な認知症として、甲状腺機能低下症、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、薬剤に伴う認知症等があります。これらを鑑別し除外することが大切です。

軽度認知障害(MCI)とは:記憶障害の訴えはあるが日常生活動作は正常、全般的認知機能も正常であることから、認知症ではありませんが認知症に至る前段階とも言えます。認知症への移行(コンバート)率は1年間で5〜16%と言われていますが、正常に戻るリバート率は6~41%とも言われています。糖尿病、高血圧、高脂血症等の基礎疾患がある方はそれらのコントロールを行いながら運動、趣味活動等で脳を刺激しながらコンバート予防に努めることが重要です。

認知症の種類 

認知症の主なものとして、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症があります。最も多いのはアルツハイマー型認知症で約70%を占めます。次に多いのは脳血管性認知症で約20%です。レビー小体型認知症は4.3%と少ないと思われがちですが、レビー小体型認知症の第一人者である小阪先生は、レビー小体型はもっと多く実際には20%は占めると言っておられます。これは、アルツハイマー型、脳血管性との合併が多いからでもあります。

左は厚生労働省研究班の調査結果、右は小阪先生による割合です

認知症の症状

症状には中核症状と行動心理症状(BPSD)があります。中核症状は、記憶障害、見当識障害、判断力の低下、実行機能障害等がありますが、付随してくる症状としてBPSDがあります。BPSDは、陰性症状としては比較的初期から出現する意欲低下、抑うつ、睡眠障害等がありますが、陽性のものとしては幻覚、妄想、脱抑制、暴力、徘徊等があり、これらは認知症の進行と共に出現します。いずれもご家族や介護者を悩ませる厄介な症状ですので、対応が必要です。

認知症の診断

認知症は以下の手順で診断していきます。

①問診

通常ご家族同席のもと、ご本人から情報を聴取しますが、必要に応じて先にご家族から情報を聞くことがあります。認知症は何時、何処で発症したかは曖昧なものですので、ご家族からは認知症を疑うエピソードを聴取します。また、日常生活に支障があるのか、怒りっぽくなった、疑いやすくなった等の性格変化の有無、幻視、幻聴、妄想があるのか、睡眠中の状態はどうなのか等、多岐に渡った情報を丁寧に聴取します。

②神経心理テスト

当院では以下のものを行います。     

1、MMSE

世界中で行われている簡易的な検査です。満点は30点で、25点未満が認知症疑いですが、軽度の認知症の場合は満点を取れることもあります。検査時間は10〜15分です。

2、ADAS-J 

MMSEよりは複雑な検査で検査に要する時間は30分程度です。MMSEよりは多くの情報が得られ、その変化で薬の効果を確認することもできます。満点は70点で、間違えると加点する方式なので、点数が低いほど認知機能は保たれていて正常は5点以下です。

3、ABC認知症スケール

MMSE, ADASが医療関係者が行う他覚的なものであるのに対して、介護者の評価を中心としたものです。従って患者さんへの負担はありません。日常生活動作、精神症状、記憶障害、見守り時間等からご家族、介護者が評価します。満点は117点で、117点〜101点が健常または認知症疑い(MCI)、100点〜86点が軽度、85点〜71点が中等度、70点以下が重度の認知症になります。この評価点数は世界的に治験で行われるCDRと強い相関を示すもので、評価時間は約10分で行われることから大変有用な検査であると言えます。

1、画像診断

当院では基本的に以下の画像検査を八王子医療センター、八王子クリニック新町で行って戴きます。いずれも健康保険の適応内で行います。                           

頭部MRI: 脳の萎縮(海馬傍回含む側頭葉内側面)や大脳白質の虚血性病変、ラクナ梗塞の有無をみます。VSRADというソフトを用いて、海馬周辺の萎縮が特異的かどうかを判別します。                         ②脳血流SPECT : MRIが器質的な病変を見るのに対してこちらは機能画像になります。MRIではわからない脳の血流低下部位をみることで、アルツハイマー型、脳血管性、レビー小体型認知症の鑑別を行います。                       ③DATスキャン・MIBGシンチ:レビー小体型認知症が疑われた場合で、アルツハイマー型認知症との鑑別が必要な場合に行います。いずれも八王子医療センターで健康保険適応内で実施されます。

2、認知症の治療

非薬物療法と薬物療法があります。

①非薬物療法:主にデイサービスで行われる運動、体操が最も重要であるが、他に歌を歌ったり、書道、囲碁等の文化活動も重要です。

②薬物療法:中核症状に対して:保険適応のあるものは塩酸ドネペジル、リバスチグミンパッチ、ガランタミン、メマンチンの4種であり、これらの使い分けは重要になります。

BPSDに対する薬物療法:意欲低下(アパシー)・幻覚、妄想、易怒性等には抗認知症薬を使用しますが、睡眠障害には転倒、認知症の悪化をもたらせない非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬を用います。いずれも患者さんの症状を重視して少量から使用していきます。

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